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最近の実用化技術

相模中研では、独自の有機合成技術を基盤とした研究戦略による新規材料及び有用物質の製造技術の創製を行い、それらの実用化 (社会実装) 、さらにはそこで得られた知見の社会還元に貢献して参りました。2002年に現在の綾瀬市に拠点を移転して以降の実用化技術として、ピラゾール誘導体やウラシル誘導体を基盤とした医農薬中間体の製造技術の開発、トリアジン誘導体による有機EL素子用電子輸送材料の開発などがありますので、ご紹介いたします。

ウラシルおよび2'-デオキシウリジンのトリフルオロメチル化反応

ウラシルは、リボ核酸 (RNA) 中に主に存在する重要な化合物です。特に、ウラシルがトリフルオロメチル化された5-トリフルオロメチルウラシル (5-TFU) は、医農薬化学においてとても重要な中間体です。しかし、従来の5-TFUの合成経路は、多段階 (6段階, T. Fuchigami et al., Tetrahedron Lett. 1982, 23, 4099.参照) で、大量にかつ高純度品を得るための精製が困難であるという問題がありました。我々が開発した反応では、1段階で高収率 (94%) かつ高純度の5-TFUを得ることが可能です。本合成手法は技術供与され、現在工業的製造技術として利用されています。その他にも、5-TFU誘導体である2′-デオキシウリジンにおいても高収率でトリフルオロメチル化できることを報告しております。

関連文献

Catalytic trifluoromethylation of uracil to 5-trifluoromethyluracil by use of CF3I and its industrial applications
D. Uraguchi, K. Yamamoto, Y. Ohtsuka, K. Tokuhisa, T. Yamakawa, Appl. Catal. A-Gen., 2008, 342, 137.

トリアジンを主骨格とした有機EL用電子輸送材料の開発

1,3,5-トリアジン系材料は、有機EL素子内の電子輸送に好適なLUMO準位と酸化還元耐性を備えています。一方で、電子輸送材料として使用する場合には異なる置換基を任意に導入し高性能化を図る必要がありました。そこで本研究所では、Lewis酸による芳香族ニトリルと芳香族酸塩化物との[2+1]型環化反応により「2,4,6位に異なる置換基を持つ非対称トリアジン系材料の合成法」の確立に至りました。この方法で得られた材料を鍵中間体としてカップリング反応を用いることで、種々の置換基を導入する事で所望の電子輸送特性を持つトリアジン系材料を可能としました。さらに、東ソー株式会社との共同研究によりトリアジン系材料は世界で初めて有機EL素子内の電子輸送材料として採用され、現在様々な有機EL製品に使用されています。関連記事
第47回(令和4年度)井上春成賞 「有機EL用電子輸送材料の開発

東ソーニュースリリース「有機EL用電子輸送材料の開発」が第47回「井上春成賞」を受賞

 

関連文献

Diverse dimerization of molecular tweezers with a 2,4,6-triphenyl-1,3,5-triazine spacer in the solid state
Y. Hisamatsu, H. Aihara*, H. Chem. Commun. 2010, 46, 4902.
High electron mobility layers of triazines for improving driving voltages, power conversion efficiencies, and operational stability of organic light-emitting diodes
T. Matsushima,  M. Takamori, Y. Miyashita, Y. Honma, T. Tanaka, H. Aihara, H. Murata*, Org. Electronics 2010, 11, 16.
Synthesis and Electroluminescence of New Organic Emitters Based on a π-Conjugated 1,3,5-Triazine Core
H. Aihara, T. Tanaka*, M. Satou*, T. Yamakawa, Trans. Mater. Res. Soc. Jpn. 2010, 35, 675.
Ambipolar Carrier Transport in Bis(triazinyl)arenes and Their Application in OLED
H. Aihara, N. Yanai, T. Yamakawa, T. Tanaka, M. Satou, Trans. Mater. Res. Soc. Jpn. 2006, 32, 333.

ピラゾール-4-カルボン酸エステルの選択的簡便合成

種々のピラゾール骨格は、医薬、農薬、殺菌剤へ応用されているため、非常に重要な化合物として知られています。そのため、これらピラゾール骨格を有する化合物を効率的に製造する方法の開発が切望されていました。しかし、一般的に2-アルコキシメチレンアシル酢酸エステルと置換ヒドラジン類との反応において反応選択性が低いため、1,3-二置換ピラゾール-4-カルボン酸エステルとその位置異性体である1,5-二置換ピラゾール-4-カルボン酸エステルが副生することが知られています。そこで本研究では、2-アルコキシメチレンフルオロアシル酢酸エステルとメチルヒドラジンを反応させることで医農薬中間体として有用な3-フルオロアルキルピラゾール−4−カルボン酸エステル (A) を、簡便で安全な操作で、高収率かつ高選択的 (95%かつ99%以上の選択性) に製造可能な方法を確立しました。本製造手法は技術供与され、新規SDH阻害剤 (ミトコンドリア電子伝達系複合体II阻害剤) などの開発に繋がる技術として非常に重要な役割を果たしております。


関連文献
“1-置換-3-フルオロアルキルピラゾール-4-カルボン酸エステルの製造方法” (特許第4114754号)

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