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事業概要

研究の目的

所長 相原秀典
 
「有機合成化学を用いて社会の発展に役立つ物質およびその製造方法を創り出す
 

 本研究所は、産官学のいずれとも異なる独自の創立基盤に立脚した研究機関として、1963年に設立されました。その後、半世紀以上に渡り、卓越した有機合成力と化学への情熱を以って、多くの有用な化学技術を創出し、我が国の化学産業の発展に貢献してまいりました。

 

■社会環境の変化
 2020年より長引くコロナ禍に加え、東欧情勢の緊迫はエネルギー・資源価格の上昇を招き石化市場に影響を与え始めています。未だ先行きの不透明な経済・国際情勢の中、日本の化学産業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)、ビッグデータとAIを活用したMI(マテリアルズインフォマティックス)への対応を迫られており、そのソリューションを外部連携先に求めるオープンイノベーションが活発となっています。このような新たな潮流のもと、基礎から応用までの実践的な研究開発に取組んできた本研究所には、化学産業界の研究開発における戦略的ハブとしての機能が益々求められるものと想定しています。

 

■公益の増進:化学による社会貢献
 
 このような社会情勢の中、本研究所は、学術・産業のニューフロンティアの開拓に繋がる先端的な技術シーズを生み出す研究開発を推進し、化学産業の持続的成長および産業競争力をもたらす革新的技術の創成を目指します。本年度は、次の3分野に重点的に研究資源を配分し、研究開発を加速します。

 

機能性材料分野:π共役・複素環化合物の合成技術を活かした、第6世代移動通信システムなど、次世代の情報通信技術の基盤となる半導体や表示素子に求められる電子的・光学的機能材料の開発
技術開発分野 :フッ素化学に関する高度な知見を活用し、本研究所で独自に見出した有用な、あるいは産業的ニーズの高い含フッ素化合物の革新的製造プロセスの開発

カーボンニュートラル分野:CO2の排出抑制のための太陽電池等の再生可能エネルギー源用部材の開発、並びにカーボンリサイクルに資する有機物の化学的再生方法や炭素固定反応用触媒の開発

 
2022年4月1日
副理事長 所長 相原秀典

公益目的事業

1.研究に関する事業

 研究事業は本研究所が掲げる公益目的事業の基軸となる事業です。新しい学術分野を切り開く独創性のある学術研究及び今後の社会ニーズに応え得る科学技術の開発研究を本事業の目的としています。
■研究事業
 本研究所は単なる既存の知識の組み合わせによる技術の改良や学問的追究のみに終わる研究ではなく、化学工業に有用な原理的あるいは革新的な化学技術の発見、発明を指向した研究を行っております。
■共同研究事業
 本研究所で見出した化学技術を社会ニーズに直結した実用化技術へと成熟させるために、広く産業界との共同研究を積極的に実施し、研究成果の早期の結実を目指しています。また、研究員を相互に派遣することで市場ニーズや技術課題の共有化を深め、工業化のための効率的な共同研究を推進しています。

2.研究成果等を広く一般の利用に供する事業

■広報事業
 本研究所で生まれた新しい研究成果は、逸早く特許出願や新聞発表、学会発表、学術論文投稿等を通じて社会に公開し、科学技術の発展や学術の進化への貢献を目指しています。
■技術交流事業
 研究開発の学術的な質の向上と科学的な深化を進めるために、著名な研究者による講演会や定期的な学術セミナー等を開催し、大学や産業界の多分野の研究者や技術者との意見・情報交換の場を提供することで、最新の学術・技術情報の共有化を図っています。
  ・フッ素相模セミナー(毎年6月開催)
  ・材料相模セミナー(毎年10月開催)
  ・農薬相模セミナー(毎年1月開催)
■技術ライセンス並びにコンサルティング事業
 本研究所で生まれた新しい化学技術は、産業界から要望があれば可能な範囲でライセンスいたします。また、蓄積した知見や技術を産業界に役立てるため、所外からの要請に応じて、分析・試験等を含む化学技術に関するコンサルティングを行います。

3.人材育成に関する事業

 自然科学の分野における国際競争力を高め、質の高い研究成果を創生するための基盤は「人」であり、創造性豊かで挑戦意欲を持った研究者を育てる人材育成事業も、本研究所の重要な公益目的事業の一つです。また、近隣の大学等から卒業研究生や大学院生、インターンシップ学生を受け入れ、主に化学に関わる基礎から高度な専門的研究に関する教育及び研究指導を行うとともに、本研究所の研究員を非常勤講師や連携教員として派遣することで、大学等での高等教育の一翼を担っています。

研究部門

材料化学部門

 材料化学領域は、有機材料化学グループ、電子材料化学グループ、無機材料化学グループ、及び機能性高分子グループで構成され、主に有用な機能物質の創製を目指して研究展開を図ります。
  材料化学領域が取り組む有用な機能物質の開発研究では、「高移動度や高耐久性を示す有機EL用電子輸送材料・正孔阻止材料」、「次世代のTADF-OLED用電化輸送材」や、「n型液晶材料」、「有機電極触媒」などの有機電子材料;「水溶性色素」や「有機撮像素子用光電変換材料」、「有機屈折率 変調材料」などの有機機能性色素;高耐熱性シロキサンなどの機能性無機材料;「n及びp型高分子半導体材料」、「導電性ポリマー中間体」、「超高分子量ポリマー製造触媒」などの機能性ポリマー材料とその関連技術の開発などを行っています。また、「量子化学計算」や「機械学習」、「新しいハロゲン化技術」を利用した材料開発手法など、機能物質の開発研究を加速させる周辺技術の開発についても行います。

 物質創製を得意とする本領域のグループでは、機能性有機材料の開発研究において鍵となる「π共役・複素環化合物」を重点研究領域に設定し、基礎化学的に興味の持たれる新しいπ共役・複素環の構築と、得られた新規化合物が示すであろう特異な物性の利用を目指した核心的研究についても実施しています。

生物環境化学部門

 生物環境化学領域は、生物制御化学グループ及び生命化学グループから成り、主に生物活性物質の創製、環境保全技術の開発、さらには有用タンパク質や細胞の分離・精製技術の開発を目指しています。

 生物環境化学領域では、環境保全物質として揮発性有機化合物などを捕らえる環境薬剤、及び「病害虫・雑草を制御する化学農薬」や「抗菌性樹脂用モノマー」、「水処理用殺菌剤」などの生物制御物質の開発研究を推進しています。また、バイオマーカーとして有用な細胞外小胞の検知・精製を可能とするアフィニティーリガンドとして機能する生体高分子の開発に取り組んでいます。

化学技術開発部門

 化学技術開発領域は、精密有機化学グループ及び触媒有機化学グループで構成され、次世代の化学産業を担う有用物質の創製とその効率的な生産技術の確立を目指して研究を行っています。

 化学技術開発領域では、「医農薬製造中間体等の有機ファインケミカルズ」や「フッ素系高分子モノマー」、「ポリウレタン樹脂製造用 原料」などの低分子機能材料の製造法の開発、及び、ポリウレタンや環状ポリオレフィンなどの製造における高分子合成反応の機構解明を行っています。また、「ウレタン樹脂用水系変性剤や硬化剤」、「フッ素系界面活性剤」、「細胞培養液改質剤」、「ゼオライト合成用構造指向剤」などの有機系機能物質、「強発光性金属錯体」や「温度応答性配位高分子」などの錯体化合物の創製研究にも取り組んでいます。さらに、近年、多くの有機材料分野において多用されている「フッ素化合物」を重点研究領域に設定し、フッ素化合物の革新的製造法の開発と、そのプロセスイノベーションによる新規機能性フッ素化合物の創製を目指す核心的研究についても実施しています。

研究支援部門

 研究支援部門は、製造技術グループ及び分析グループから成り、所内の研究グループの活動を多面的に支援する部門です。
  製造技術グループは、所内の研究グループが取り組む様々な合成研究に用いる原料化合物や共通中間体の合成、プロセス開発におけるスケールアップの実証、技術情報調査などの研究支援業務を通して研究所の効率的な研究活動の推進に寄与するグループです。また、研究開発に関わる外部機関からの支援要請に対しても、可能な範囲で引き受けます。
  分析グループは、400MHz-NMR装置、単結晶X線回折装置および粉末X線回折装置などの構造解析装置、光分析装置(UV-Vis,FL,IR)、自動融点測定装置、熱分析装置およびBET測定装置などの物性測定装置、HPLC、イオンクロマトグラフィー、GC-MS及びLC-MSなどの分離・分析装置を保有しています。これら分析機器類の保守点検に努め、常時信頼のおける分析データが得られるように維持管理し、各グループの分析業務の支援を行います。また、外部機関からの分析依頼にも応じます。

相模中央化学研究所パンフレット
公益財団法人相模中央化学研究所
〒252-1193
神奈川県綾瀬市早川2743-1
TEL.0467-77-4112
FAX.0467-77-4113
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公益目的事業
1.研究に関する事業:学術や産業の進歩・発展に寄与するため、化学に関する基礎研究から産業界との共同研究まで、総合的な研究事業を展開します。
2.研究成果等を広く一般の利用に供する事業:本研究所で生まれた研究成果は逸早く特許出願、学会発表、学術論文投稿等を通じて社会に公開するとともに、 産業界の要望に応じて可能な範囲でライセンスいたします。
3.人材育成に関する事業:大学学部学生や大学院生を受け入れ、化学に関わる基礎から専門的な教育を実施します。
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